30までに死ぬ宣言からのロスタイム

30までに死ぬ宣言からのロスタイム

色々と諦めてた人が呆れられたくなくて諦めなくなったお話

【夢見れぬ僕の見た夢の話】(2/11)

そうそう、そんなにネタがないので夢日記でも書くとしよう。

 

夢を夢と自覚する時としない時がある。
ぼんやりと「ああ、これは夢だ」と自覚しながらも微睡むときと、「ああ夢だったか」と 覚めてから自覚するときと、それぞれ在る気がしている。

夢の中で走るときに力が入らず、足がどんどん沈んでいくような、まるで自分の身体じゃないみたいな感覚や、突拍子もない荒唐無稽な夢に困惑する感覚。

 

まぁどちらにせよ、どうにせよ。最近よく夢をみる。

 

いつだったかの夢の話。

その前に、登場人物たる昔の恋人の話をせねばなるまい。
いわゆる略奪愛とでもいうのだろうか、結果的に僕はそういう恋愛の果て、その子と昔付き合っていた。学生でもない時期の恋愛なので、別に浮ついた感じでそうなったのではなく、お互い本気でそうなった。誰かが言うには「恋愛の自由」というのは即ち「自由競争」なのだそうだ。

夢は脈絡がないものだ。なぜか僕は高校生だった。いつものように教室で悪友とくだらない話をしていた。部活の話、深夜アニメの話、ゲームの話など、おそらく放課後か何かなのだろう。友人が言う。
「そういや◯組の〇〇さん、XXとヨリ戻したらしいよ」
「えっ」
正直に驚いた。その聞いた名前(◯組の〇〇)が昔の恋人だったこともそうだが、XXというのはその彼女の元カレの名前だったのだ。そもそも高校時代にはその子と僕は知り合ってすらいないのだが、そこに関しての違和感は夢が覚めるまでは認知できなかった。つまり、きっと僕はその時点で「夢を見ている」と自覚してなかったのだろう。

 

「え、でもさ。〇〇さん、XXのこと無理って言ってたよな?」

「それがさ、プロポーズしたんだって」
「マジで」
「うん、指輪持ってきたらしいよ」


外は雨が降っていた。傘もささずに僕は教室を出て、非常階段の踊り場から下を見下ろす。そこには彼らがいた。本来ならば見えるはずのない角度、距離なのに相合い傘をする二人の手には揃いの指輪が光って見えた。

 

「嘘だろ」と声に出したのか、それとも心の中で思ったのかは分からない。
ただ、もう既に世界は過去の虚像ではなく、いつもの風景だった。

夢だったと自覚した。夢であってくれと願う間もなく目が覚めた。
少しショックを受けた。いや多大にショックを受けた。
額に滲んだ寝汗はホットカーペットによるものだけではなかっただろう。

汗をかいたからだろうか、喉が渇いた感覚があった。脇に置いてあったペットボトルのお茶を一口飲む。どうしたものかなと考え、まだ微睡んでいる中、スマホを起動しメモに事の顛末を書いて、そして二度寝した。

 

また夢を見た。仕事の場面だった。見覚えのないアパートの一室。目の前には話題の芸人がいた。何かのロケに巻き込まれているらしいことは想定できた。


「それでですね・・・」


僕は彼らに話していた。最初は気付いていなかったが、周囲にはカメラマンや音声さんもいた。どうやら僕は何かの取材を受けているそうだ。

 

「なるほど、その子にまだ未練があると」

「いえ、そういうわけではないんです」

「というと?」

「彼女が幸せになってくれるならそれでいいんです。ただ、諦めた上で妥協した幸せはきっと居心地もいいんでしょうけど、それじゃきっと同じことの繰り返しになってしんどいと思うんですよね」

諸行無常の響きあり」
「いよぉ~~~!」

「すゑひろがりず」の画像検索結果



カメラに向かって見得を切る。なんだこれは。
いや、しょうがないか。そういう人たちなんだから。
現場の監督だろうか、OKサインを出して一端収録が止まった。

 

「で、どうなんや。未練は」

先程までのふざけ顔ではない、親身になって聞いてくれる人の顔だった。もちろん、きっと興味本位みたいな部分もあるのだろう。僕は換気扇のスイッチを入れて、煙草に火をつける。

「ないと言えば嘘になりますね」

「男ってのはそういうもんだよな」「うんうん」

「馬鹿なんですけどね、意味のない努力もしてるんです」
「ああ、わかる~すごくわかる」
「見当違いでもそうしてしまうものよのう」


何故か慰められている。そもそも僕は一体いつの誰の話をしてるんだろう。

「して、その女子(おなご)の名前は」

「△△です」


は?と困惑する。さっきの〇〇(元恋人)の名前だ。

「して、お主はどうするつもりじゃ」
「夢はみるものではなく、叶えるものぞ」

「そうですね…僕は―――」

 

そこで夢が覚めた。

 

なんだったんだこれは。と頭が混乱する。
まるで、さっきの夢の続きなのだろうか。
時計を見ると30分も経っていなかった。

まだ6時にもなっていない、朝方である。

 

「・・・はぁ」

 

上着を羽織り、外に出る、顔がぴりぴりと冷える。
煙草をポケットから取り出す。使い捨てライターを握り、火をつける。
小さく吸い込んで、大きく吐き出す。

寒さによるものなのか、煙なのか分からない。
白い煙が朝もやの空に広がった。

 

「・・・未練、なぁ」と口から漏れる。
スマホを取り出し、先程のメモ欄に二度寝の夢の話を続けて打ち込んだ。

 

打ち込んだ後、ワードを入れ込んで夢占いの検索をかけた。
長ったらしい記事が多い。
目次を使ってさっさと辿りつくようにする。
頭も少しは冴えてきているのだろう。
2、3のページを確認したが共通してこう書かれていた。

 

「未練が断ち切れたことの暗示」

 

そんなもんなのかな、そういうものなのだろう。

「未練がないと言えば嘘になる」とは夢の中の僕も言っていたけど、そういう部分は多かれ少なかれ、あるのだろう。

 

「夢はみるものではなく、叶えるものぞ」

 

と会ったこともない、彼らから言われた言葉が思い出された。

 

2本目の煙草は入ってなかった。
まだ早い時間なのだが、徒歩10分の道のりを歩くことにした。

 

その徒歩10分と千円とちょっとで1つの小さな夢も叶う。

高望みもしない、そういうもんなのである。